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ということで前回まで為替ヘッジの方法について見てきました。
今回は日本の投資家がドル資産を持っている場合に、ドル安を為替ヘッジするには何を気をつけるべきなのか?もう少し為替ヘッジを考えるポイントをみていきたいと思います。
当記事は個人的に情報をまとめた投資研究記事です。内容は正確なものを心がけて作成していますが、その内容を保証するものではありません。また当記事は当該投資法を勧めるものでもありません。投資判断についてはご自身で調べた内容をもとにご判断ください。当記事内容をもとに投資判断されませんようにお願いいたします。万一、当記事をもとに損害を被ったとしても当方では一切の責任を負うものではありません。


何もリスクもコストもなくヘッジができればいいのですが、ヘッジにはリスクもコストもかかります。
ではどのようんなリスクがあるのでしょうか?
まずは過去の動きを調べてみました。
それではまず為替の影響はどれくらいあるのか?みていきましょう。
ということで過去のチャートを見てみましょう。
【ドル円チャート 1971年ー2024年】

為替が過去どれくらい動いたのかみていきましょう。
最大の下落幅は1971年360円から1995年80円までで、77.78%の下落でした。
これは変動相場への移行、金ドル兌換制の崩壊といった、世界的に通貨制度が変遷してきた影響もありました。
1990年から現在までは80円から150円の価格圏を推移しています。
この間、
高値から底値まではおよそ50%の下落率。
底値から高値まではおよそ100%上昇率でした。
過去の高値360円から現在では60%ほどの下落でした。
特徴をまとめると、
- 最大の下落は77.78%の下落であった
- 現在は戻して60%の下落にとどまっている
- 単年で為替レートが倍になったり、半分になることはなく、時間をかけて変化してきた
ということを踏まえると、次のことが言えると思います。
- ある一定の範囲で動きやすい
- それなりの時間をかけて動いていく
- 為替は株ほど大きく動かない
前回の記事では金利差が為替ヘッジコストに影響してくることをみました。
では次に為替ヘッジで影響してくる金利差について見てみましょう。
【日米金利チャート】

米株投資でドル安をヘッジする場合、米国と日本の短期金利の差が問題になります。
もし米国の金利が日本より高い場合、金利差分がおおよそヘッジのコストに影響してきます。
上のチャートは日米の金利を表したチャートです。
これを見てみると、ほとんどの期間において米国の方が日本より金利が高かったことがわかります。
つまり為替ヘッジをしていた場合にコストがかかっていた可能性が高いです。
2008年から2017年ごろは日米の金利差が狭まり1%と差がない時期もありました。
ですが3%、4%と金利差がある期間も多くあります。
たとえ3%でも投資期間中の10年でそれがあれば、30%のコストが為替ヘッジでかかるかもしれません。
為替ヘッジのコストは長期ほど積み上がりやすく、日米の金利差の関係では大きくなる可能性があります。
特徴をまとめると、
- 米国と日本ではほとんどの期間で米国の金利が高く、日本の金利が低かった。
- 金利差が非常に小さい期間と大きい期間があった。(日米ともに金融緩和に動いていた)
- インフレが吹き荒れた1980年代を除けば、最大の金利差は5%くらいだった。
ということで、次のようなことが起こる可能性があります。
- 日米の金利差を見ると、為替ヘッジでコストがかかる傾向がある。
- 長期的にコストが累積した場合、影響が大きくなる。
日米の金利を見ると、長期に渡り米国の金利が高く、日本が低い傾向がありました。
今後もこうなるというわけではありませんが、注意はしておいた方がよさそうです。
【現状について】
ちなみに金利差が現状どのように影響するかについて下の図を参考に載せておきます。
日付 | 建玉の価格 | スワップポイント | 保有期間 | 年率換算 |
9月7日 | 147.654円 | 53,587円 | 216日 | 約5.9% |
10月12日 | 149.728円 | 44,356円 | 190日 | 約5.7% |
私がFXを使って実際にドル売のポジションを使って為替ヘッジをした時の抜粋です。
スワップポイントは2国間の金利差による調整のようなもので、ドル売りでコストとしてかかってきます。
現状は日米の金利差の影響を受けて、コストが大きいことがわかります。
では次に米国株の動きがこの期間どうだったのでしょうか。
【SP500種指数】

上のチャートは米国株を代表するSP500種指数のチャートです。
この間、SP500種指数は53年で5,677%の上昇がありました。
途中、ドットコムバブルやリーマンショックで大きく下げる場面もありました。
ドットコムバブルでは2000年のピーク1552.87ドルを超えたのは2007年でした。
リーマンショックで2007年の高値の更新は2013年でした。
ですが、長期で見ると大きく上昇を続けてきました。
為替の動きに対して株式の方が大きな動きを見せました。
為替の上下はあったとしても、長期で持ち続けた場合、株式は利益が出ていたことになります。
- 1971年からの株式の上昇率は5,677%
- ドットコムバブルの高値1500ドル台を大きく抜けていくまで13年かかった。
- 為替に比べて株価はダイナミックに動く。
ということで次のことが言えると思います。
- 同じ期間でも、株式は為替に比べて大きく上昇した。
以上をまとめると、ドル円でドル安の為替ヘッジを考えた場合、次のようなことがあります。
- 金利差が発生してコストになる可能性が高い
- 長期で金利差が続く可能性がある
- 金利差が大きい時と、小さい時がある
- 為替は株式ほど大きくは動かない
- 株式の上昇は為替の下落よりもずっと大きかった
特に為替ヘッジを考えた場合、ヘッジコストは頭の痛い問題です。
現状では、5%ほどの金利差があり、ヘッジコストに大きく影響しています。
ではもうひとつ参考にプロは為替問題をどう扱っているのか?をみていきたいと思います。
私たちの年金の一部を運用している世界最大級の年金運用機関であるGPIFを見てみましょう。

GPIFの資産運用では国内債権、外国債権、国内株式、外国株式をおおよそ25%、一部オルタナティブ投資を組み入れる形で運用がさています。
現在、GPIFのポートフォリオの半分は外国の資産です。
では外国の資産をどう扱っているかというと、
現状では、基本的には為替ヘッジはしないという方針をとっています。
超長期での運用であること、為替ヘッジコストがかかるということがあるのではないかと推測します。
以前年金の運用を担当されていた窪田氏の話では、為替ヘッジをしないのは購買力を考慮しているというのも面白い点です。
もし外貨建の資産が円高で価値が下がったとしても、円高になれば海外のものが安く買えるようになります。
購買力という観点からは、外貨資産の価値が下がっても、購買力は上がっているから、それである程度バランスするということです。
超長期(GPIFは100年の運用を考えている)で運用するようなGPIFでは為替ヘッジは基本的に行わないようです。
楽天証券 資産形成のイロハ【7】外債投資、為替ヘッジすべき?https://media.rakuten-sec.net/articles/-/39700
- 現状、GPIFでは基本的には為替ヘッジをしない

為替ヘッジについては、いろいろ考えがあり、人それぞれにやり方があると思います。
ではどんなパターンがあるのか?を個人的に考えてみました。
長期投資か、短期投資かでは大きい違いがあるでしょう。
- 為替の動きも含めてリスクをとりたいのか?
- ヘッジするなら、どの程度のヘッジをしたいのか?
- 為替の予想をどうみているのか?確信はどれくらいあるのか?
などでもスタンスが変わってくると思います。
- 為替のマイナスは株式の上昇力で取り返すのを期待!
長期で見た場合、為替と比べれば、株価は大きく上昇してきました。
為替でマイナスになっても、それ以上に株価が上昇して取り返せる可能性が高いです。
為替は実際に取引で使われるものでもあり、株に比べて大きい動きにはなりにくいです。
一方で、為替ヘッジコストは頭の痛い問題です。
今までの日米の金利の動向を考えると、ヘッジコストがかかり、長期ではコストが累積する可能性があります。
為替ヘッジをしてパフォーマンスを低下させるより、為替ヘッジをしないで、ある程度為替のマイナスには目をつぶって長期投資をするのも一案です。
また円高は購買力を上昇させる効果もあります。
円高になったとしても、
- 何を買うことができるのか?
という購買力がバランスすることで、影響は抑えられる可能性があります。
- 為替の影響以上の株価上昇に期待
- 円高になっても購買力のアップが期待できる
- 長期で為替ヘッジするとコストが累積して大きくなる可能性がある
- 為替ヘッジコストが大きくかかる可能性があっても、コストと割り切って投資
- 日米金利差の動向
- 為替ヘッジのコスト
を考えた場合、日米の金利の傾向は為替ヘッジコストがかかる可能性が高く、長期でのその傾向は続いています。
為替ヘッジを長期で行えば、ヘッジコストが累積的に大きくなる可能性についてもよく考えておく必要があります。
その上でも、将来はわからないし怖い、大きく円高になるかもしれない!
と考えるならば、為替ヘッジコストはかかったとしても、もしもの下落を回避する保険料と割り切ってしまうのも一案かもしれません。
それは個人の考え方によると思います。
日米の金利差はリーマンショック後の何年かは、金利差が1%もないような時期もある一方で、4%を超える差がある期間も多くありました。
株価が1971年から2024年で90ドルが5200ドルになったと考えた場合、
- sp500の運用利回りは複利で13.26%です。(大まかにです、正確な数字ではありません)
年度により大きくブレはあるものの、長期で見れば、為替コストがかかったとしても株価の上昇が勝つ可能性があります。
- 【為替ヘッジしなかった場合】
5,200ドルを1ドル150円換算で計算すると、約780,000円です。
- 【為替ヘッジコストで年間2%パフォーマンスが低下した場合】
約2,300ドルになっていました。ドル円を360円計算で約828,000円です。
為替ヘッジなしに比べて、48,000円のプラスでした。
- 【為替ヘッジコストで年間3%パフォーマンスが低下した場合】
約14,453ドルになっていました。ドル円を360円換算で約520,000円です。
為替ヘッジなしに比べて、260,000円のマイナスでした。
金利差の状況によっては、影響はあるものの為替ヘッジありなしでパフォーマンスに違いが出たことがわかります。
ただこの試算で注意する点としては、為替ヘッジがプラスに働いた試算だということは踏まえておいた方がいいと思います。
結果的に360円から150円の円高の為替ヘッジがうまくプラスに機能したことになります。ですのでその分がプラスに働いています。
つまり、為替ヘッジがうまく機能したパターンにおいてすら、
- パフォーマンスに大きな差が見られていない
- 場合によっては大きくマイナスになった
ということは頭に入れておいた方が良さそうです。
ちなみに運用利回りの違いでどれくらいの差が出たのかも見ておきましょう。
【90ドルを52年間、複利運用した場合】
利回り | 株価 |
---|---|
1% | 176.33 |
2% | 349.48 |
3% | 549.66 |
4% | 781.44 |
5% | 1048.19 |
6% | 1350.38 |
7% | 1690.49 |
8% | 2071.57 |
9% | 2497.68 |
10% | 2972.15 |
11% | 3498.99 |
12% | 4082.47 |
13% | 4727.45 |
14% | 5439.87 |
15% | 6226.29 |
上の表は52年間90ドルを複利運用した場合、いくらになっていたかの表です。(円換算ではありません)
運用利回りが2−3%低下することで、リターンは大きく変わってきます。
年間の利回りが大きいほど、その影響は小さく、年間利回りが小さいほど、その影響は大きくなります。
運用利回りによる影響も大きそうです。
- 為替ヘッジをしても、株価の上昇で利益が出せる可能性がある
- 為替ヘッジがうまくいっても、為替ヘッジなし並みのパフォーマンスになる可能性もある
- 為替ヘッジコストの影響は大きい

- 為替の波をうまく乗りこなす投資スタイル
金利差やドル円の方向性はその時々で変わっていきます。
コストもその環境で変わってきますし、為替の動きや状況を見てタイミングを選んでヘッジするというのも一つです。
なかなか為替を予測するのは難しいことです。それができれば単純にFXで儲けれそうですが、、、。
金利を動かす要因についての知識を深めたり、為替を学ぶことで、大きな動きを把握する手がかりを掴めるかもしれません。
政策金利は急激に動くものではなく、経済の動きに応じて時間をかけて動く傾向があります。
また、金利差が今小さいのか、大きいのかは調べればわかることです。
金利差が大きい時のヘッジは慎重に検討が必要でしょうし、逆に金利差が小さい時には為替ヘッジも検討しやすいと思います。
全期間を為替ヘッジするのではなく、場面に合わせた為替ヘッジというのも一案だと思います。
ただ、為替の知識や動向に関する知見を持っていないと、リスクを上乗せしただけに終わる可能性もあります。
- 金利や状況、見通しに合わせて為替ヘッジを使い分ける
- 為替の知識が必要
- 場合によってはいいとこどりができる、一方で場合によっては余計にマイナスを負う

短期投資の場合は、長期投資といくつか違う点があります。
- 期間が短い分、為替ヘッジコストは長期投資ほど積み上がらない
- 短期間の変動のパフォーマンスに受ける影響が大きい
短期では為替の予測は難しいです。また、一時的な動きの影響も受けやすくなります。
また、期間が短い分ヘッジコストのパフォーマンスに与える影響が小さいということが言えると思います。
不確実性が高く、大きな為替変動を避けるという意味では、為替ヘッジを検討するのも一案に思います。
その際も、為替ヘッジにどれくらいコストがかかりそうか?というのは踏まえて考える必要はあると思います。
ただ為替のマイナスが怖いだけで大したリターンも望めない投資をするのであれば、そもそも国内の投資をする方がいいかもしれません。
為替ヘッジのコストがかかってもリターンを狙いに行くだけのリターンがあるのか?
為替の先行きをどう見ているか?
によっても、使い分けるといいと思います。
現状は金利差が大きいです。コストはかかりそうです。
コストに見合った、下落の可能性を避けられそうなのか、リターンはありそうか?
を総合的に考えてメリットがありそうか、それとも為替の影響をよくも悪くも受け入れるのかといったところを考えるといいかもしれません。
- 期間が短い分、為替ヘッジコストは積み上がらない
- 短期の変動の影響を大きく受ける
- ヘッジコストがリターン、避けれるリスクに見合うものか検討する
- 大きいコストの影響がなければ為替ヘッジもいい
- 最悪のタイミングを避けて、そこそこで安定したヘッジを目指す
為替の予測は難しいと言われています。
タイミングもうまくできればいいですが、最悪のタイミングで入るとパフォーマンスへの影響は大きくなります。
誰でもできる対策としては、分散して為替ヘッジを行うという方法があると思います。
為替ヘッジを行うタイミングを何回かに分けて、期間や量を分けてやることで、最悪のタイミングにまとめてやってしまうことを避けることができます。
逆に最高のタイミングに入れることもなくなりますが、そうすることで安定した結果を出すことができます。
為替はもともと株ほどは大きく動かないものです。
最悪のタイミングを避けて、そこそこのヘッジができれば、株のパフォーマンスへの影響も抑えられ、安定したリターンを期待できます。
また、全部を為替ヘッジするのではなく一部を為替ヘッジしたり、一時期にのみ為替ヘッジするというのもあります。
時間を分散したり、為替ヘッジの量を調整したりして、リスクを抑えるということも考えられます。
- タイミングを分けて為替ヘッジすることで、悪いタイミングの影響を抑える
- タイミングを分けて為替ヘッジすることで、良いタイミングの影響も抑えられる
- 極端にいいも悪いもない、そこそこの範囲で安定した為替ヘッジを行える

ということで今回は為替ヘッジの活用法に見てきました。
為替ヘッジはその人のリスクの考え方や、投資スタイルによっても変わってきて、さまざまな考えがあると思います。
それぞれ自分にあったスタイルを作るのがいいのではないかと思います。
為替ヘッジにはいい面もあれば、マイナスの面もあります。
どういったリスクがあり、どうすれば良いのかはよく考えて投資をした方がいいです。
色々見てきましたが、次回では実際に私が為替ヘッジをやってみた体験を記事にしていみたいと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
- 為替ヘッジは投資スタイルや考え方によって違った戦略がある
- 為替ヘッジはいい面も悪い面もあり、よく理解して扱う

